【注目】大麻の薬物検査はどうな る?使用罪の検討で揺れる日本
日本のターニングポイント
現在、日本において大麻使用の罰則強化が検討されており、にわかに注目を集めています。
厚生労働省では2021年1月より「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を作り、規制のあり方につて、今夏をめどに取りまとめをするスケジュールで、有識者が集まり議論を始めました。
そこで、今は使用のみ罰則規定がない大麻について、新たに「使用罪」として法規制された場合、どの様なことが起こるのかをご紹介します。
最後まで読み終えていただくと、以下が理解できます。
- 大麻の使用罪について
- 世界の大麻事情
- 合法国での摂取について
本記事が少しでもお役に立てましたら、別記事も読み進めていただけると幸いです。
罰則強化が議論されている理由
抜け穴
現在の大麻取締法では、所有や無許可栽培は禁じられている一方で、覚せい剤など他の違法薬物とは違い、「使用」については罰則規定がありません。
そもそも、大麻取締法は植物に対する法律であり、成分に対する法律ではありません。
大麻の成分で人体に作用するものは「THC(テトラヒドロカンナビノール)」です。
大麻は産地によってTHCの含有量が大きく異なります。
日本で栽培されている大麻草は、ほとんどTHCは含まれていません。
しかし、日本では、どんな大麻草を所持していても逮捕されるようになっています。
世界から逆行する日本の動き
2020年、国連の世界保健機関(WHO)が大麻を「最も危険な薬物」のリストから除外しました。
また戦後、GHQとして日本の大麻取締法を定めたアメリカでは、連邦としては非合法となっていますが、その是非について議論が始まっています。
仮に連邦としても合法化となった場合、日本の大麻取り締まりについて、アメリカの意向として規制したという根拠が無くなってしまいます。
それに加えあくまで憶測ですが、菅内閣への政権交代もあり「使用罪を作るタイミングは今しかない」と、規制派が議論を急いでいるのではないでしょうか。
前述の「大麻等の薬物対策のあり方検討会」で示された資料では「近年、若年層による大麻の検挙者が急増し、6年連続で過去最多を更新中」とされています。
大麻をきっかけに他の薬物にも手を出す「ゲートウェイドラッグ」とも位置づけされています。
それも規制派の根拠の一つになっていますが「違法化してるからそうなるんだ」という意見もあり、ここは議論が別れるところです。
さまざまな視点
さらに、明らかに使用した形跡があっても、所持していなければ検挙できませんので、現場の捜査員から「使用の罪も作って欲しい」と求める声が挙がっているようです。
一方で、大麻は近年の研究において、抗がん剤の副作用である吐き気の緩和や、がん治療の一部にもその有効性が確認されています。
医療用大麻の必要性が叫ばれていますので、より明確化するために、法整備をしたいということでしょう。
使用罪が成立するとどうなるか
大麻の使用罪が成立すると、どのような事態となるのでしょうか?
検査の流れ
大麻を使用すると、
THCが体内で代謝される → 尿から排出されます → 採取してスクリーニング検査 → または確認検査に回します。
スクリーニング検査は3~4日前後、確認検査は5~6日前後で結果が判明します。
ただし、今は薬物検査で検出されても「所持」を立証できない限り罪には問われません。
使用罪が成立すると、恐らく「所持していなくても、代謝されたTHCが尿から一定数値以上、検出されたら逮捕」できるようになるものと推測されます。
使用罪が設定されなかった訳
しかし、大麻を作る農家では、収穫の際に大麻の成分を吸い込み「大麻酔い」という症状によくなっているそうです。
この時に検査をして、陽性反応が出ないとは言い切れないとのこと。
また大麻草は、戦前まで北海道や東北地方で栽培を推奨され、その名残で野生のものがたくさん自生しており、麻縄をはじめ神社のしめ縄、七味唐辛子にも種子が使われています。
古来から大麻は、日本の文化に深く根ざしているものなのです。
この様な経緯もあって、麻薬取締法が制定された1948年当時、使用罪は設定されませんでした。
大麻について分かっていること
さらに、規制を始めた時代は「大麻のハイになる成分がTHCである」という事実は未解明でした。
今でも研究例が少なく、実はまだ使用の影響などよく分かっていません。
「20歳未満が使用すると、脳への悪影響と、強い依存性が出る可能性がある」ということも微妙だと言われています。
使用罪の創設に当たって、このような点を当局がどうやって明確化していくのか、議論の推移を見守っていく必要があるでしょう。
世界における大麻の規制
では、世界の国々では、大麻についてどの様な規制があるのでしょうか?
世界で初めての合法国
世界で初めて合法化されたのは、南米のウルグアイです。
2013年に、18歳以上の国民・永住者のみが、政府の管轄下で販売されるものを購入できるようになりました。
アメリカは、2012年にコロラド州、ワシントン州で解禁され、現在は15の州で娯楽目的での使用が合法化。
医療目的での利用も3州以外は認められている状況です。
他の国の現状
ソフトドラッグに寛容なオランダでも、THC濃度が高いものを除き、大麻の個人使用は「違法だが罰則がない」という、事実上の容認となっています。
そして、カナダでも2018年に合法化され、成人であれば入手可能となりました。
一方で、厳しく対処している国もあり、特にマレーシアでは、200gの所持で死刑になります。
もし合法の国で摂取して帰国したらどうなるか
もし合法の国で大麻を吸って日本へ帰国したとすると、どの様な事態が考えられるのでしょうか?
外務省からの警告
大麻取締法において、所持、譲り受け、譲り渡しの罪は「刑法第2条の例に従う」としています。
刑法第2条とは、日本国外での行為について、国民が刑法で処罰される場合の規定です。
事実カナダが合法化された際、外務省が
「日本では大麻の所持・譲渡は違法とされており、処罰の対象となる。これは、国内のみならず海外において行われた場合でも適用されることがある」
と声明を出しており、日本国外であっても大麻に手を出さないよう注意喚起しています。
捜査が困難となり立件できないだけで、違法行為という認識に変わりはありません。
合法の国からの帰国時に、尿検査で陽性反応が出たとしたら「滞在時に所持していた」とみなされ、逮捕される可能性もゼロではないでしょう。
まとめ
日本において、大麻の「使用罪」が創設されるのか、今後も注目していく必要があります。
しかしながら、使用罪の是非に関わらず、合法の国で吸ってから帰国時に検査を促された場合、結果次第でどういった対応になるかは未知数です。
合法の国だからといって、摂取して帰国するのはリスクがある行為ですので、こういった知識は知っておくべきでしょう。
今回は以上となります。
もし少しでも参考になりましたら、別記事も参照されて下さい。
Written by 212
Cover Illustration by Maria Shukshina from Icons8
《参考サイト》
Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/sonodahisashi/20161102-00064011/
https://news.yahoo.co.jp/byline/nishikawashinichi/20170218-00067824/
https://news.yahoo.co.jp/articles/8a703814ac4d66bb5529d8b5baaf4b8454a7595c
NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210113/k10012811321000.html
政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201806/3.html
BuzzFeed Japan
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/nazenogamatta-noniokimasita
TROJA
https://torja.ca/worlds-marijuana/
外務省
https://www.anzen.mofa.go.jp/od/ryojiMailDetail.html?
keyCd=68717&fbclid=IwAR2rnfx3nda3m4YXwDwLSOx_SsYtFHbvs0nmd9IGQUPSe9fA
wjU42U1COfM
外務省;海外安全情報
https://www.anzen.mofa.go.jp/c_info/oshirase_yakubutsuchuui.html
LSIメディエンス
https://www.medience.co.jp/drugabuse/item.html